国際結婚のビザ相談事例② 技能実習生と結婚

相談内容

私は、日本人男性(39歳)です。今、同じ市内の工場で働くベトナム人の技能実習生(25歳)と付き合っています。もうすぐ、技能実習期間が終了するため、国際結婚しようと思っています。結婚手続については、東京のベトナム大使館と市役所の両方で済ませました。これから、ベトナム人妻のビザ(日本人の配偶者等)を取得しようとしているのですが、元技能実習生なので、通常の手続きと異なると聞きました。確実に日本人の配偶者等ビザを取りたいのですが、どうすればよいでしょうか?

※以下、「日本人の配偶者等ビザ」の在留資格のことを、単に「配偶者ビザ」と記載します。

行政書士からの回答

ご結婚おめでとうございます。相手の方が、技能実習生の場合、原則として、技能実習期間が満了した時に一旦帰国していただき、改めて配偶者ビザを取り、再来日することになります。

本来、技能実習制度は、日本の優れた技術を学び、学んだことを母国に持ち帰って活かしてもらうための制度です。ですから、帰国してすぐに日本に戻ってしまうと、技能実習制度の目的が達せられないことになります。ビザの審査をする出入国在留管理局では、この点を重く見るのですが、きちんと対策を取れば、ほとんどのケースで配偶者ビザを取ることができます。

対策1:技能実習生が日本にいる間に、国際結婚の手続きを行う

国際結婚の手続きは、日本人同士の結婚と異なり、必要書類も多く煩雑です。必要書類の翻訳も必要になります。また、何度も役所に行く必要がある場合もあります。配偶者ビザを取るためには、原則、両国での婚姻証明書が必要です。つまり、日本と相手国の両方で婚姻届を出す必要があります。

婚姻届を出す場合、どちらか一方が役所に行けば大丈夫な場合もありますが、二人で行ったほうが何かとスムーズです。特に日本の市役所での婚姻届に関しては、相手の方(技能実習生)が用意する書類が多いので、相手の方が直接確認したほうがよいでしょう。

技能実習生が母国に戻ってしまうと、書類のやり取りが大変になります。結婚の意思が決まっているなら、技能実習生が日本にいる間に結婚手続きをしたほうがよいでしょう。

なお、技能実習生は結婚してはいけないという噂があるようですが、これは間違っています。現在、技能実習の対象国となっている国および日本では、技能実習生と日本人が結婚できないという法律は存在しません。

対策2:技能実習生の勤務先や組合に国際結婚することを報告する

技能実習生と国際結婚する時には、できるだけ技能実習生の勤務先や所属する組合にも報告しておきましょう。夫婦が同じ職場である場合、交際時から周囲が知っていることが多いのですが、そうでない場合、日本人側が技能実習生の職場を訪れ、職場の上長などに挨拶しておくとなおよいです。

結婚の報告の際には、技能実習期間満了まで、これまで通り働くことを伝えておくと安心されると思います。

技能実習先を退職してしまった場合はどうするか?

もし、技能実習生が何等かの理由で、実習先を退職してしまった場合、状況によって取るべき行動が異なります。詳しく正確に状況をお聞きしないと、最適な判断は難しいのですが、原則は下記となります。

まず、技能実習先に退職することを伝えているのかを確認してください。もし、伝えていない場合、早急に伝えてください。日本人の婚約者から伝えても構いません。技能実習先に伝えないと、失踪者扱いになってしまい、その後に日本人と国際結婚したとしても、配偶者ビザの審査が非常に厳しくなります。

そして、退職の理由を正確に聞き出してください。単に日本での生活に疲れたのか、心身の病気なのか、体調不良なのか、過酷な労働環境なのか、実習先からのハラスメントなのか、その理由によっても対応が異なります。心身の病気なら、その程度によっても対応が異なります。最近多いのは、「来日前に聞いていた仕事内容や待遇と実情が全く異なり、心身共に不調をきたし、仕事ができなくなった」というものです。

昨今、技能実習の闇の部分がニュースで取り上げられ、一部のメディアでは、「技能実習制度は現代の奴隷制度だ」と厳しく指摘されています。全ての技能実習先がそうではないのですが、こうした技能実習の闇の部分の犠牲になっている技能実習生も少なからずいます。もし、こうした状況により退職せざるを得なくなった場合、その客観的証拠を集めることで、帰国しないでそのまま日本に残れる場合もあります。ただし、例外的、特例的な方法であるため、全ての方がこの方法を取れるわけではありません。

原則としては、技能実習生が実習先を退職すれば一時帰国することになります。実習先と相談し、復職の選択肢がないのであれば、速やかに一旦帰国してください。そして、改めて、配偶者ビザの申請をし、許可されたら来日するという流れとなります。


この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

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