専門行政書士が解説!外国人技能実習生が日本人と結婚した場合のビザ手続き

外国人技能実習生は、「技能実習」という在留資格(技能実習ビザ)で日本に住んでいます。このビザの本来の目的は、当該外国人が日本で高度な技術や知識を学び、その技術等を母国に戻って活かしてもらうことです。例えば、日本の農家で、日本の高度な農業生産技術を学び、母国の農業発展に生かしてもらうということが本来の目的です。ですから、日本人と国際結婚して、引き続き日本に住む場合、本来の目的が達せられないことになります。

このため、現行制度では、原則として、技能実習ビザから日本人の配偶者等ビザ(以下、配偶者ビザ)への変更は認められていません。原則として、一旦帰国して、再度呼び寄せることになります。この場合、在留資格認定証明書交付申請という手続きになります。ただ、技能実習の期間が終了してからすぐにまた呼び寄せるとなると、簡単ではありません。この場合も、やはり上記の本来目的と異なるからです。

以下、ケースごとにポイントを解説します。

本来の技能実習期間を終了して、日本人と国際結婚する場合

本来の技能実習期間(通常は3年間)の終了を待ち、日本人と国際結婚する場合、一旦、母国に帰国してから、改めて呼び寄せることとなります。この場合、在留資格認定証明書交付申請という手続きになります。ただ、技能実習の期間が終了してからすぐにまた呼び寄せるとなると、簡単ではありません。この場合も、やはり上記の本来目的と異なるからです。

また、この時の配偶者ビザの審査では、技能実習生時代の在留状況(勤務状況)も審査されます。万が一、犯歴などがあった場合、厳しく審査されます。たまにあるケースなのですが、技能実習生として来日時、万引きなどの軽犯罪、条例違反等をしていた場合、そのこともきちんと申告しておかないと、配偶者ビザは不許可になります。犯歴があったとしても、軽犯罪(1年以上の懲役以外)であれば、きちんと対策を取れば、致命的なマイナスポイントにはなりません。

技能実習生を途中でやめて、日本人と国際結婚する場合

何らかの事情があり、本来の技能実習期間の途中で、実習先の会社を辞める場合、一旦、帰国してから、配偶者ビザを申請し、ビザ許可後に呼び寄せることになります。

このケースではいくつか注意が必要です。まず、可能な限り円満退社をしてください。間違っても、無断退社は避けてください。技能実習生の管理をしている監理団体(事業協同組合等)は、技能実習生の勤務状況を、ビザ審査機関である出入国在留管理局に報告する義務があります。

無断退社をしてしまうと、その後に国際結婚したとしても、配偶者ビザ申請にかなり不利になります。ですから、実習先の会社を辞める場合、事前に退社の意思を伝え、可能な限り円満退社をするようにしてください。

ただ、万が一、実習先がブラックな職場の場合、円満退社は難しいかもしれません。例えば、過度のサービス残業、劣悪な労働環境、耐えられないハラスメント、人権侵害などがある場合、結婚相手の日本人から、実習先や監理団体に連絡を取り、正確な状況を確認されたほうがよいでしょう。そのうえで、過度のサービス残業等が事実なのであれば、しかるべき公的機関等に相談ください。

こうした事実が認められた場合、技能実習生を途中でやめて、その後に国際結婚されたとしても、配偶者ビザの審査でマイナスになることは少ないです。

なお、外国人技能実習生が妊娠している場合、すでに出産して子供がいる場合などは、一旦帰国することなく、そのままビザ変更(在留資格変更)できる可能性もあります。状況によって異なりますので、詳しい状況をお聞きしてから、その可能性があるか否かお伝えしております。

技能実習生を続けながら、日本人と国際結婚する場合

この場合、ビザ変更の必要はありません。実習先にそのことを伝え、引き続き実習生として働いてください。夫婦の同居が難しい場合、夫婦の実態の証拠を用意しておいたほうが、その後の配偶者ビザ申請や永住申請時に有利となります。具体的には、夫婦の写真、日本人親族と一緒に撮影した写真、SNSの履歴などですね。

技能実習期間終了後、一旦、帰国してから、配偶者ビザを取得し、改めて呼び寄せることになります。

技能実習生と国際結婚する場合のよくある質問

技能実習生と国際結婚される方からいただく質問をまとめました。実際には個別の状況によりますが、一般的な回答は下記になります。

Q

配偶者ビザの申請から認可までどの位期間がかかりますか?

ご夫婦の状況によります。当事務所に依頼いただくケースですと、申請から許可まで2~3ヶ月かかっています。それ以上かかる場合、元技能実習生だから問題になっているわけではなく、他の原因があることがほとんどです。SNS等には、技能実習終了後、数年待たなければ来日できないといった投稿があり、実際にそういう方もおられるようですが、法律に基づききちんと対策をとればそういったことはございません。

Q

技能実習ビザのまま結婚しても、法律的に大丈夫ですか?

はい、法律的には問題ありません。婚姻に関する日本の法律(民法)では、技能実習生と結婚してはいけないという条文はありませんし、その他、特例法でもそのような規制は一切ありません。また、相手国の法律で、技能実習の身分のまま婚姻してはいけないというルールはないです。もし相手国の法律でそういうルールがある場合、来日前に本人に厳しく指導されているはずです。

Q

技能実習終了前に相手国に行って婚姻手続きをする場合、監理団体(組合)に報告してからのほうがよいですか?

はい、できれば報告してください。その際、実習期間終了まではやめないことも伝えてください。日本人の婚約者から、監理団体の担当者あてに、その意思を伝える手紙を書いてあげてもよいかと思います。

元技能実習生の配偶者ビザ 必要書類例


技能実習ビザから配偶者ビザへの変更申請の場合、もしくは一旦帰国して再度呼び寄せる場合、提出すべき書類例は下記です。あくまで一例です。実際には、お客様の状況をお聞きし、必要な書類を個別にリストアップします。

  • 外国人のパスポート(コピー)
  • 外国人の証明写真(3ヶ月以内に撮影したもの。4×3㎝)
  • 日本人の戸籍謄本
  • 外国人の母国で発行された結婚証明書
  • 日本人の住民票(世帯全員分記載のもの。マイナンバー記載ないもの)
  • 日本人の 直近年度 住民税の納税証明書(市役所発行)
  • 日本人の 直近年度 住民税の課税証明書(市役所発行)
  • 日本人の 預金残高証明書
  • 交際経緯を説明する書類
  • 交際を裏付ける書類(二人で撮った写真、メール・LINE・スカイプ等の履歴など)
  • 実習期間を途中退職した場合 ⇒ 退職理由説明書(当事務所で作成可能)
  • その他、状況に応じて追加書類が必要な場合あり

この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

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